FC2ブログ

アルジャーノンに花束と愛を。

スポンサーサイト

--/--/-- --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Top ▲

03自宅にて

2010/12/01 16:01

(まぁ考えたら、童貞って訳でもないしビビる必要なんてないか)

 結論からいうと彼は自慰を終えたばかりだった。
全身を快感が突き抜けていったかと思うとすぐに体中の熱が収まってしまった。射精後の特有のわずかな倦怠感と気持ちよさにつられて、睡魔が襲ってきている。気だるさの中、彼の胸中はこの後起るイベントに対して憂鬱だった。

(ちゃちゃちゃっとこなして、市ノ瀬の許に返してやればいいんだろ?別に感情なんてない、ただの頼まれごとだし。……部屋片付けるの、めんどくさいな)
 
  そして結果をいうならば、自慰をしたのは失敗だった。
 どこにでもある1Kの狭い部屋に彼は一人で暮らしていた。テーブルとベット、それに薄型のテレビ。必要最低限の家財と、床に散らばった雑誌や洋服……ベットの上から自分の部屋を見渡して、彼は短く嘆息をした。確実に綺麗な部屋とは言えないのにも拘わらず、掃除する気になれない―――もうすぐ悠と例の彼女が来るのに。
 昼過ぎに起きたとき彼の気持ちは高揚していた。太陽が出ているのを確認して2カ月ぶりに布団を干したほどだ。鼻歌まじりに溜まっていた洗い物を片付けている最中に、ふとまだ画面でしか見たことが無いミサヲを思い出した。
 自分好みの女性と今日一線を越えるんだ、と期待感が彼を包む。と、衝動や激しい感情が急に起こりだした。このままでは本番ですぐに果ててしまいそうだ。

(市ノ瀬に早漏とか言われちゃへこむし、抜いておくか)
 
  そう決断すると洗い物を途中で放り投げて、意気揚々とベットへ向かったのだった。
 それから少し経って―――
 彼は甚く冷静だった。ついでにちょっと面倒になっていた。悠との約束時間を逆算して、嫌々ベットの上から起き上がる。
男性の一人暮らし独特の薄汚れた空気と、夏の日のべたつき感が漂っているのを肌で感じ、まず窓を開ける。次に床の上にここ一週間で脱ぎ散らかした洋服などを拾い上げつつ、彼は悠から言われた条件を思い返えす。

(絶対キスはしないで―――かぁ。まぁいいけど。こんなこと頼んどきながら市ノ瀬も女の子らしいとこあるんだねぇ)
 
  自分の彼女の体内に彼の一部が入ってもいいが、唇が触れ合うことは許せないらしい。
独占欲とは違うのだろうが、悠なりの束縛なのかもしれない。もちろん、彼もその気持ちは汲んでやるつもりだ。
 そして、最後に言われた言葉を思い出す。
 ―――前戯だけは立ち入らせてね。あと、ちょっとMっ気がある子だから、いじめちゃうけど、軽蔑だけはしないでね。あ、でも、あんたは優しくしてあげてね―――

(まぁ市ノ瀬はSかMかって言ったら、Sっぽいから納得だけど……せめて入れているときは、席外して欲しいな)
 
  と。言えなかった望みを胸中で漏らしながら、手中にまとめた洋服を洗濯機の中に放り投げた。一息ついて部屋を見渡し、まだまだ改善の余地があることに気が滅入る。
 掃除機なんてものは彼の部屋には無いので、とりあえず先ほどやりっぱなしにした洗い物の続きをすることにした。スポンジに洗剤を付けながら、他に条件が無かったか先日悠との会話を隅々まで思い出す。

(ミサヲちゃん、かぁ)
 
  ―――ミサヲ、男の人とエッチしてみたいんだって―――

(……ってことは、やっぱ……いや、でも……)
 
顔が思わず緩む。分かっていながら、思考は止められない。

(処女だよなぁ……)

 きっと目の前に鏡があったら彼は愕然とするであろう―――気持ちの悪い笑みを浮かべて、胸が熱くなるのを感じた。と、同時に股間が反応する。

(……………………元気だな、俺)

  第三者目線で、彼は苦笑した。
 あっという間に洗い物を終えて、キッチンから部屋へ戻る。再度燃えだした煩悩に思惟を奪われてしまう。

(もう一発、抜いとくか?)

  その心配は無用になった。
 ピンポーン―――チャイムが鳴った。その音はあまりにも突然で、彼はびくりと身を震わせた。同時に跳ねた心臓が、これから起こる事への期待と不安で加速する。
 鼓動とは正反対にゆっくりとした足運びで、玄関へ向かう。短い距離が、果てしなく遠く感じる……
 念願という言葉はこの時に使うものだ。と少し経ってから彼は認識することになる。
Top ▲

Copyright (c) アルジャーノンに花束と愛を。 All Rights Reserved.

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。